腰痛があると、筋膜トリガーポイントの形成や筋肉の緊張により可動域が制限されますが、最新研究ではストレッチや筋膜リリース等の治療で前屈10.9%、後屈20.3%の改善が可能です。

この記事を監修している人:奥村龍晃(柔道整復師資格保有)
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こんにちは!
脊柱側弯症専門のフィジカルバランスラボ整体院、
院長の奥村龍晃です。
前回のおさらいと今回のポイント
前回は、腰の可動域(ROM)が日常生活にどれだけ大切かをお伝えしました。
朝起きて顔を洗う、靴下を履く、振り返る…これらすべての動作に腰の柔軟性が関わっていましたね。
今回のポイントは:
- 筋肉の中にできる「硬いしこり」の正体
- なぜ痛みが身体を硬くするのか
- 悪循環から抜け出すためのヒント
筋膜トリガーポイント:痛みと硬さの元凶
トリガーポイントって何?
みなさん、肩こりで「ここを押すと痛気持ちいい」という場所を見つけたことはありませんか?
実は、腰にも同じような「ポイント」があるんです。
これを専門用語で「筋膜トリガーポイント(MTrPs)」と呼びます。
簡単に言うと、筋肉の中にできる「硬いしこり」のようなものです。
触ると痛みを感じ、時には離れた場所にまで痛みが広がることもあります。
研究によると、慢性的な痛みを抱える人の実に95%がこのトリガーポイントを持っているそうです。
2種類のトリガーポイント
トリガーポイントには2つのタイプがあります:
- 活動性トリガーポイント:何もしなくても痛い、押すと別の場所にも痛みが広がる
- 潜在性トリガーポイント:普段は痛くないけど、押すと痛い
腰痛でお悩みの方の多くは、腰方形筋(腰の横側の筋肉)、中殿筋(お尻の筋肉)、腸肋筋(背骨の横の筋肉)などに活動性トリガーポイントを持っています。
なぜトリガーポイントが動きを制限するのか
1. 筋肉が縮んだまま戻らない!
トリガーポイントができた部分では、筋肉の繊維が縮んだまま固まってしまいます。
例えるなら、輪ゴムを引っ張った状態で固定してしまったようなもの。
この状態では、筋肉が本来の長さまで伸びることができません。
研究では、これを「サルコメア短縮」と呼んでいます。
筋肉の最小単位であるサルコメアが、神経から過剰な指令を受けて縮んだままになってしまうんです。
2. 痛みが防御反応を引き起こす
トリガーポイントから発生する痛みは、身体に「動かすな!」という警報を送ります。
すると、周りの筋肉が防御的に固まってしまいます。
これを「筋性防御」と呼びます。
痛いから動かさない→動かさないから筋肉が硬くなる→硬くなるからさらに痛い…という悪循環に陥ってしまうんです。
3. 筋膜全体が硬くなる
筋膜は全身をつなぐボディスーツのようなもの。
一箇所に問題が起きると、その影響は広範囲に及びます。
特に腰の筋膜(胸腰筋膜)は、豊富な感覚神経を持っており、炎症や硬さの変化に敏感に反応します。
ある研究では、腰背部の皮膚を少し動かすだけで、脊柱や骨盤、股関節の可動域が変化することが示されました。
これは、筋膜の状態が直接的に身体の動きに影響することを証明しています。
疼痛-攣縮-疼痛サイクル:悪循環のメカニズム
悪循環はこうして始まる
- 初期の痛み:重い物を持ったり、悪い姿勢を続けたりして筋肉に負担がかかる
- 筋肉の緊張:痛みを感じると、身体は自動的に筋肉を緊張させて守ろうとする
- 血流の低下:緊張した筋肉は血管を圧迫し、酸素や栄養が届きにくくなる
- さらなる痛み:酸素不足の筋肉は、痛み物質を放出する
- 慢性化:この状態が続くと、トリガーポイントが形成される
この悪循環を「疼痛-攣縮-疼痛サイクル」と呼びます。
一度このサイクルに入ってしまうと、自然に改善することは難しくなります。
神経-筋-骨格系の連携プレー
身体は全てつながっている
腰痛による動きの制限は、単に筋肉だけの問題ではありません。
神経、筋肉、骨格が複雑に関わり合っています。
- 神経の過敏化:痛みが続くと、神経が過敏になり、小さな刺激でも痛みを感じやすくなる
- 関節の動きの低下:筋肉の緊張は関節の動きも制限する
- 姿勢の変化:痛みを避けるために無意識に姿勢が変わり、他の部位に負担がかかる
希望の光:改善は可能!
研究が示す改善の可能性
ここまで読んで「じゃあ、もう治らないの?」と心配になった方、安心してください。
最新の研究では、適切な治療により、これらの問題は改善可能であることが示されています。
- ストレイン・カウンターストレイン(SCS)という手技療法で、腰の前屈が10.9%、後屈が20.3%改善
- 筋膜リリースで、指先と床の距離が有意に改善
- 適切な運動療法との組み合わせで、さらに効果が高まる
日常生活でできること
- こまめに動く:同じ姿勢を続けない
- 温める:血流を改善して筋肉の緊張を和らげる
- 深呼吸:緊張をほぐし、リラックスを促す
- 水分補給:筋膜の柔軟性を保つ
まとめ:理解することが改善への第一歩
腰痛で身体が硬くなるメカニズムは複雑ですが、基本的には「痛み→緊張→硬さ→さらなる痛み」という悪循環です。
筋膜トリガーポイントがこの悪循環の中心的な役割を果たしています。
でも、このメカニズムを理解することで、適切な対処法が見えてきます。
次回は、実際にどのような症状が現れるのか、そして日常生活にどんな影響があるのかを詳しくお話しします。
痛みと動きの制限に悩む毎日から、少しずつでも改善への道を歩んでいきましょう。
僕たちがその一歩一歩をサポートします!
次回予告
次回は「腰痛患者さんの脊柱の動きの特徴と日常生活への影響」について詳しく解説します。
実際の患者さんの事例も交えながら、より具体的にお話ししていきますので、お楽しみに!
参考文献
1. 筋膜トリガーポイントと慢性腰痛の関係
URL: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23947760/
- 慢性非特異的腰痛患者42名を調査し、活動性トリガーポイントが腰部と臀部の筋肉から生じる局所痛と関連痛が痛み症状に寄与することを確認。
活動性トリガーポイントの数が痛みの強度と睡眠の質に関連していることを示しています。
2. 疼痛-攣縮-疼痛サイクルの批判的レビュー
URL: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23906363/
- 脊椎疾患における疼痛-攣縮-疼痛サイクルの存在について40年以上議論されてきた内容を批判的にレビュー。
腰痛患者の相当数が筋攣縮を有し、急性腰痛患者では筋電図活動が増加していることを示し、このサイクルの存在を支持する一般的な証拠を提供しています。
3. 筋膜トリガーポイントへの圧迫療法の効果とROM改善
URL: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25808188/
- 急性腰痛患者63名を対象に、筋膜トリガーポイントへの圧迫療法により、静的・動的VASスコア、圧痛閾値、ROMが有意に改善したことを報告。
トリガーポイントへの圧迫が急性腰痛治療に効果的であることを示しています。
4. ストレイン・カウンターストレイン療法の臨床効果
URL: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19078466/
- 慢性疼痛を平均2.7年間患っていた20名の患者にSCS療法を実施。
20名中19名で治療直後に50-100%の痛み軽減と機能改善が見られ、6か月後も20名中11名で部分的改善が維持、4名は完全に痛みから解放されたことを報告しています。
5. 筋膜性疼痛症候群の病態生理と治療の最新アップデート
URL: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40110636/
- 筋膜性疼痛症候群は、筋線維の緊張帯内の過敏な部位(トリガーポイント)によって特徴づけられる慢性局所痛症候群であり、局所痛と関連痛の両方を引き起こす。
病態生理、診断基準、分類について現在も研究が進行中であることを示し、記事の内容を学術的に裏付けています。
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