腰痛があると脊柱の可動域が制限され、日常生活に大きな支障をきたしますが、可動域改善によって痛みや生活の質が向上することが研究でも示されています。
この記事を監修している人:奥村龍晃(柔道整復師資格保有)
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こんにちは!
脊柱側弯症専門のフィジカルバランスラボ整体院、
院長の奥村龍晃です。
前回のブログでは筋・筋膜性腰痛の基本的なメカニズムについてお話ししました。
今回は「体の動き」に焦点を当てて、腰痛と密接に関わる「脊柱可動域(ROM)」についてご説明します。
「最近、前かがみになるのがつらい」「ぎっくり腰になってから体が硬くなった気がする」など、腰痛と体の硬さは深い関係があります。この記事を読めば、なぜ腰痛があると体が動かしづらくなるのか、その仕組みが分かりますよ。
脊柱可動域って何?生活の中の”動き”の話
脊柱可動域(ROM: Range of Motion)とは、簡単に言うと「背骨がどのくらい動けるか」を表す言葉です。
皆さんも日常生活でこんな動きをしていると思います:
- 前に曲げる(屈曲):靴下を履くとき
- 後ろに反る(伸展):高い棚の物を取るとき
- 横に曲げる(側屈):床に落ちた物を拾うとき
- ねじる(回旋):車の後部座席を振り返るとき
これらすべての動きが脊柱可動域に含まれます。
人間の体は本来、様々な方向にスムーズに動くように設計されているんです。
腰痛があると動きが制限される理由
「腰が痛いと体が硬くなる」というのは、正しい感覚です。
実は科学的にも証明されています!
腰痛、特に筋肉や筋膜に問題がある場合(筋・筋膜性腰痛)、体の動きが制限される主な理由は3つあります:
1. 筋膜トリガーポイントの影響
筋膜トリガーポイント(MTrPs)は、筋肉の中にできる「こり固まった小さな結節」のようなものです。
「筋肉の中の小さな結び目」というイメージで、これができると筋肉が緊張し伸びにくくなり、動かすと痛みが出ます。
腰方形筋などにトリガーポイントができると、前かがみや側屈の動きが制限されます。
研究でも、トリガーポイントが多いほど痛みや動きの制限が強くなることが分かっています。
2. 痛みによる防御反応
体は痛みを感じると防御反応として動きを制限します。
ぎっくり腰や腰のケガで体が硬くなり、筋肉が無意識に緊張・固定されてしまうのはこのためです。
これは「痛み-筋緊張-痛み」の悪循環につながります。
3. 筋膜の滑りが悪くなる
筋膜は筋肉を包む膜で、本来は滑らかに動きますが、腰痛が続くと筋膜同士が「くっついて」滑りが悪くなり、特に胸腰筋膜で動きが制限されやすくなります。
可動域制限が日常生活に与える影響
脊柱の動きが制限されると、日常生活に以下のような影響があります:
- 靴下や靴を履くのが大変になる
- 洗濯物を干す、取り込むのがつらい
- 長時間座っていられない
- 寝返りが打ちづらくなる
- 車の運転で後ろを振り返るのが困難
こうした制限は、オスウェストリー腰痛障害質問票(ODI)という評価でも測定され、腰痛による可動域制限が改善すると日常生活も改善することが報告されています。
可動域と痛みと生活機能の三角関係
腰の可動域(ROM)、痛み、生活機能は密接に関係しています。
トリガーポイントが多いほど痛みが強く、痛みが強いほど可動域が制限され、制限が大きいほど日常生活が困難になります。
逆に、可動域を改善することで痛みも減り、生活の質も向上する可能性が高いです。
整体院での可動域評価について
整体院では、脊柱可動域を以下の方法で評価します:
- 目視による観察:前屈や後屈などを実際に行ってもらう
- 角度計(ゴニオメーター)による測定:曲げる角度を測る
- 指先-床間距離テスト:前屈時、指先が床からどれだけ離れているかを測る
腰痛の方は健康な方に比べて、特に前屈や後屈の可動域が制限されやすい傾向があります。
自宅でできる!可動域チェック
ご自身の脊柱可動域をチェックする簡単な方法:
前屈チェック
- 壁に背中をつけて立つ
- ゆっくり前かがみになる
- 痛みなく曲げられるところまで曲げる
- 指先が膝、すね、床のどこまで届くか確認
側屈チェック
- 両足を肩幅に開いて立つ
- 手を体側に伸ばす
- 右に体を傾けて手がどこまで下がるか確認
- 左も同様に行い、左右差をチェック
毎日記録していくと改善が実感できます。
まとめ:可動域と腰痛、そして健康な生活
今回は脊柱可動域(ROM)と腰痛の関係について解説しました。
- 腰痛があると脊柱の動きが制限される
- 原因は筋膜トリガーポイント、痛みの防御反応、筋膜の滑り低下など
- 可動域制限は日常生活を困難にする
- 可動域の改善で痛み・生活の質向上が期待できる
次回は「腰痛が動きを制限するメカニズム~筋膜トリガーポイントの役割~」について詳しく解説予定です。
腰の動きが気になる方は、ぜひ一度ご相談ください。
※強い痛みや急な動きの制限はまず医療機関を受診してください。
参考文献
1. 筋膜トリガーポイントと腰痛・可動域の関係について
「Effectiveness of strain-counterstrain in patients with low back pain: A systematic review」 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33421860/
この文献では、筋膜トリガーポイントが「疼痛を伴う可動域制限」を引き起こすことが述べられており、トリガーポイントの数が多いほど疼痛強度が高いという知見も含まれています。筋膜トリガーポイントが腰痛と可動域制限に与える影響について記事の内容を直接裏付けています。
2. 腰痛改善と可動域の関連性について
「Effect of Strain Counterstrain Technique on Functional Disability and Back Muscles Endurance in Patients with Chronic Nonspecific Low Back Pain」
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34987702/
この研究では、腰痛患者への治療介入による可動域改善が、同時に痛みの軽減と機能障害の改善につながったことが示されています。記事で述べた「可動域を改善することで、痛みと生活の質を改善できる可能性」を裏付ける証拠となります。
3. 筋膜機能と腰痛の関連について
「Biomechanical Implications of Thoracolumbar Fascia Viscoelastic Properties in Low Back Pain」 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38385376/
この論文では、胸腰筋膜の生体力学的特性と腰痛の関係が検討されています。特に記事で説明した「筋膜の滑りが悪くなる」というメカニズムについての科学的根拠を提供しています。
4. 腰痛患者の可動域特性について
「Strain counterstrain versus muscle energy technique on functional status in chronic nonspecific low back pain」
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31732225/
この研究では、腰痛患者の腰椎可動域(屈曲、伸展、側屈)に関するデータが示されており、健常者と比較して制限されていることが報告されています。記事で説明した「腰痛患者は健康な方に比べて可動域が制限されている」という主張を裏付けています。
5. 痛み-筋緊張-痛みの悪循環について
「Immediate Effects of Skin Displacement on Spinal, Pelvic, and Hip Range of Motion in Individuals With and Without Low Back Pain」
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29276460/
この論文では、筋膜の状態と脊柱可動域の直接的な関係について説明されており、記事で触れた「痛み-筋緊張-痛みの悪循環」のメカニズムについての根拠を提供しています。
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