大人の側弯症で股関節痛が片側だけ強いときは、骨盤の傾きや歩き方の左右差が重なっていることがあります。158人コホートや136人比較研究を踏まえ、観察・呼吸・片脚荷重の3ステップで負担を整理する考え方を解説します。

この記事を監修している人:奥村龍晃(柔道整復師資格保有)
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こんにちは!
脊柱側弯症専門のフィジカルバランスラボ整体院、
院長の奥村龍晃です。
はじめに
「腰の側弯は昔からあるんですが、最近は右の股関節だけが詰まる感じで歩きにくいんです」
40代後半から50代の方から、こうした相談を受けることがあります。
腰痛だけでなく、股関節までつらくなると、「もう股関節そのものが悪いのかな」と不安になりますよね。
先日いらした50代女性の方も、まさにそうでした。
長く歩いた日の夕方に右の股関節前側が重くなり、座ってから立ち上がる瞬間にも引っかかる感じが出る。
レントゲン画像では以前から側弯を指摘されていて、立った姿をみると骨盤の高さと体幹の傾きに左右差がありました。
股関節だけを見ていると分かりにくいのですが、身体全体の軸でみると、片側に負担が集まりやすい形だったんです。
僕が最初にお伝えしたいのは、大人の側弯症で股関節痛が出るとき、必ずしも股関節だけが単独で悪さをしているとは限らない、ということです。
背骨の並び方、骨盤の傾き、歩き方の左右差が重なると、片側の股関節まわりが働きすぎる状態になりやすいんですね。
だからこそ、怖がるよりも、どこで偏りが生まれているかを整理することが大切です。
なぜ起こるのか
大人の側弯症では、背骨が横に曲がるだけでなく、少しねじれながら骨盤とのつながり方も変わります。
すると、左右の股関節が同じようには使われにくくなります。
たとえるなら、少し傾いた台車を押しているようなものです。
まっすぐ進んでいるつもりでも、片側の車輪だけが強く働きやすくなります。
2019年に地域で暮らす女性158人を調べた研究では、成人の脊柱変形がみられた群で、股関節の外旋、つまり脚を外に向ける動きが少なく、骨盤の傾きや身体全体の前後バランスとも関連していました。
これは、背骨の並び方が変わると、股関節の動き方まで影響を受けやすいことを示す材料になります。
さらに2018年の比較研究では、成人の脊柱変形に加えて股関節の変形が強い人ほど、骨盤をうまく使ってバランスを取る代わりに、身体を後ろへずらすような代償をしやすく、全体の姿勢バランスも崩れやすいことが報告されました。
ここから言えるのは、股関節の変形や動きの制限が強まるほど、骨盤の仕事が減りやすく、そのぶん歩き方や立ち方の偏りが増えやすい可能性があるということです。
また2017年の研究では、手術予定だった成人脊柱変形の方は健康な人に比べて歩幅と歩く速さが落ち、右と左の床反力、つまり地面を踏む力の出方にも差があり、股関節の可動域も低下していました。
歩行は全身運動なので、背骨と骨盤のずれが続くと、片側の股関節だけに仕事が集まりやすくなります。
こうした積み重ねが、「片側だけつらい」という感覚につながることがあります。
ここで大切なのは、側弯症があるから必ず股関節痛になる、と決めつけないことです。
研究は関連を示していても、痛みの出方には個人差があります。
特に、夜間痛が強い、安静にしていても痛む、足を引きずるほど可動域が落ちている場合は、変形性股関節症など別の要素が重なっていることもあるので、整形外科での確認が必要です。
解決の方向性
僕が臨床で大切にしているのは、まず偏りを見えるようにして、次に無理のない調整を進めて、最後に変化を確かめる流れです。
最初に見るのは、痛い場所そのものよりも、立ったときに骨盤がどちらへ逃げるか、片脚立ちでどちらが不安定か、股関節をひねったときに左右差がどれくらいあるか、という点です。
ここを丁寧に見ておくと、股関節だけを追いかけるより、負担の集まり方がはっきりします。
調整を始めるときも、いきなり股関節を強く伸ばしたり、押し込んだりはしません。まずは呼吸で胸郭、つまり胸のかごの動きを出し、体幹と骨盤が協力しやすい状態をつくります。
そのうえで、股関節の前側と外側に集まりやすい力みを下げ、歩くときに片側へ乗りすぎない感覚を練習していきます。
大人の側弯症では、背骨のアライメント、つまり並び方を一回で変えるというより、日常動作で偏った負担を散らすことのほうが現実的なんです。
最後は再確認です。
「立ち上がりの詰まり感が減ったか」
「歩き始めの一歩が軽くなったか」
「片脚で立ったときの怖さが減ったか」
を、その都度見ていきます。
変化を細かく確かめると、無理なセルフケアを続けずにすみますし、その人に合う方向が見えやすくなります。
もし改善が乏しい、もしくは悪化するようなら、股関節そのものの評価を優先する。
この切り分けもとても大事です。
今日からできること
ここからは、40代後半から50代の方が自宅で始めやすい内容を3つ紹介します。
いずれも痛みを我慢して行うものではありません。痛みが出たら中止してください。
壁の前で片脚荷重の左右差を観察する(目安:左右20〜30秒×2セット)
キッチン台や壁の前に立ち、指先を軽く添えて片脚立ちをします。
骨盤が横へ大きく逃げる側、股関節の前が詰まりやすい側を確認します。
これは鍛えるためというより、どちらに負担が集まりやすいかを知るための観察です。仰向けで肋骨と下腹部の呼吸を整える(目安:5呼吸×3セット)
仰向けで膝を立て、片手を肋骨、もう片手を下腹部に置きます。吸う息で肋骨が横に広がり、吐く息でみぞおちが静かに下がるのを感じます。
胸郭と骨盤の動きがそろうと、股関節の前側へ集まる力みが和らぎやすくなります。小さな歩幅で左右均等に10歩歩く(目安:10歩×3往復)
廊下などで、歩幅を欲張らず、左右とも同じ長さの一歩を意識して歩きます。
片側だけ早く着地しないか、片側の腕だけ振れていないかを確認してください。
大きく歩くことより、左右差を減らすことが目的です。
まとめと次の一歩
大人の側弯症で股関節痛が片側だけつらいときは、股関節そのものの問題だけでなく、背骨の並び方、骨盤の傾き、歩き方の左右差が重なっていることがあります。
だからこそ、「痛い股関節だけを何とかする」より、身体全体の使い方を見直すことが近道になることが少なくありません。
研究からも、成人の脊柱変形では股関節の動きや歩き方に変化が出やすいことが分かってきました。
ただし、これは全員に同じように当てはまる話ではなく、研究の多くは観察研究です。
つまり、関連は見えても、何がどれだけ原因なのかまでは言い切れない部分が残っています。
だから僕は、研究を参考にしながらも、実際の立ち方や歩き方を一緒に確認することが大切だと考えています。
もし、股関節の前側や横が片側だけつらい、長く歩くと脚を引きずる、夜も痛むという場合は、早めに整形外科と身体全体の評価の両方を考えてみてください。
40代後半から50代は、まだ動き方を見直しやすい時期です。できることから少しずつ、身体の偏りをほどいていきましょう。
参考文献
- Adult spinal deformity and its relationship with hip range of motion: a cohort study of community-dwelling females (Spine J, 2019)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30769092/ - Radiological severity of hip osteoarthritis in patients with adult spinal deformity: the effect on spinopelvic and lower extremity compensatory mechanisms (Eur Spine J, 2018)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29417324/ - Walking balance and compensatory gait mechanisms in surgically treated patients with adult spinal deformity (Spine J, 2017)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27765712/ - The association of hip range of movement, and its side-to-side asymmetries, and non-specific lower back pain in adults aged 40 years and older (N Am Spine Soc J, 2025)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39917176/
本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、個別の診断や治療を意図したものではありません。
痛みや不調がある場合、運動中に痛みが出た場合は中止し、必要に応じて医療機関にご相談ください。
2週間以上症状が続く場合は、専門家への受診をおすすめします。
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