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【むち打ち症解説シリーズ】第9回:回復を加速させるセルフケア〜専門家の視点で選ぶ、本当に役立つ知識〜

むち打ち後は『小さく・正確に・気分よく』を守るセルフケアが回復の最短ルートで、1日合計10分の呼吸・視線運動・胸ゆらしを継続すれば神経過敏が和らぎ可動性と安定性が着実に改善します。

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この記事を監修している人:奥村龍晃(柔道整復師資格保有)
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こんにちは!

脊柱側弯症専門のフィジカルバランスラボ整体院、
院長の奥村龍晃です。

 

前回までで、むち打ち症(WAD)の評価と専門的アプローチの全体像をお話ししました。

では「自分でできること」は何でしょう?

今日は、専門家の視点から“本当に役立つセルフケア”だけを厳選してお伝えします。
難しいことはしません。
安全で確実に、回復の土台をつくる内容です。

注意点として、強い神経症状(手足のしびれが急速に悪化、力が入らない、排尿排便の異常)や発熱・激しい頭痛・意識の変化などがある場合は、まず医療機関での評価を優先してください。

セルフケアの原則:身体と神経に「安全の合図」を出す

むち打ち後は、神経系の“警報装置”が過敏になりがちです(第2回参照)。
だからこそ、セルフケアの目的は「危険ではないよ」という安全信号をコツコツ積み重ね、身体と脳を落ち着かせること。

具体的には次の3本柱です。

  1. 呼吸とリラクゼーションで神経を鎮静化する
  2. やさしい可動で関節・筋の“動きの質”を保つ(第3回・第8回)
  3. 感覚と運動をつなぎ直す、丁寧な再学習(第4回)

時期別セルフケアの考え方

急性期(受傷〜数週間):守りながら、止めすぎない

ポイントは「安静にしすぎない」こと。
痛みの範囲内で、安心できる小さな動きを保つのがコツです。

  • 目標:腫れや強い痛みの鎮静/過度な防御反応を和らげる
  • NG:強いマッサージ、痛みを我慢するストレッチ、長時間の固定
  • OK:こまめな体位変換、やさしい関節のゆらし、楽な呼吸の確保

おすすめセルフケア(1〜2時間に1回、合計5分でOK)

  1. 360度ゆったり呼吸(2分)
    胸・脇・背中にも空気が広がるイメージで、鼻から4秒吸って6秒吐く。
    肩は力を抜き、吐く時に「ふ〜」と長く。
    神経のブレーキ(副交感神経)を優位にします。
  2. 頸胸移行部のやさしい“ゆらし”(1分)
    椅子に浅く座り、みぞおちの下を支点に、上半身を1〜2cmだけ前後へ小さくゆらす。
    首そのものを動かすよりも、胸のつけ根からの連動を引き出すのがポイント。
  3. 目と首の連携リセット(2分)
    目線だけで左右→上下→斜めにゆっくり動かす。
    首はついていかなくてOK。
    「見る」刺激で脳の安心感をつくり、首まわりの緊張を間接的に下げます。

亜急性〜慢性期(数週間〜):少しずつ「できる範囲」を広げる

痛みが落ち着いてきたら、動きの質を上げる“再学習”を少しずつ。
量より質を大切にします。

  • 目標:関節のなめらかさ/神経の過敏軽減/動作の再学習
  • NG:痛みを伴う反復運動、フォームが崩れるほどの回数・負荷
  • OK:小さく・正確に・気分よく(3条件の維持)

おすすめセルフケア(毎日合計10分目安)

  1. 胸・背中・肩甲骨の連動運動(胸椎の滑走改善・2分)
    仰向けで肘を軽く曲げ、床の上を滑らせるように腕を横から上へゆっくり開閉。
    肩甲骨が“サァーッ”と滑る感覚を味わい、痛みゼロ〜違和感1までに留める。
  2. 眼球を動かす訓練(位置覚の再学習・3分)
    壁に小さなターゲット(付箋)を3点貼り、顎を引いたまま視線で順番に追う。
    慣れてきたら、首を1〜2割だけ動かしてターゲットをなぞる(第4回の考え方)。
  3. 頸胸連動の首回し(質重視のモビリティ・3分)
    先に胸を「小さく」回し、その後に首がついていく順序を意識して円を描く。
    速さや大きさではなく、なめらかなつながり感を優先。
  4. 後頭部と手の押し合い相撲(安定化の初歩・2分)
    座位で後頭部に手を当て、痛みゼロ〜違和感1の位置で、5割の力で5秒「そっと押し合い」。
    前後左右それぞれ3回。
    関節に不安を与えない範囲で、深部の安定感を育てます。

日常生活で「避ける」と「勧める」

  • 避ける:長時間同一姿勢、痛みを我慢した強いストレッチ、早すぎるスポーツ復帰、寝不足
  • 勧める:こまめな姿勢替え(30〜60分ごと)、短時間の屋外歩行、十分な睡眠、ぬるめ入浴

デスクワーク:モニタは目線の高さ、肘は90度、足裏はしっかり床へ。椅子は少しだけ浅く座ると、胸椎が動きやすいです。

スマホ:目線を下げすぎない。胸ごと軽く傾けると首単独の負担を減らせます。

なぜ効くのか(仕組みのミニ解説)

  • 呼吸・リラックス:自律神経のバランスを整え、過敏な“警報装置”を落ち着かせる(第2回)。
  • やさしい可動:関節と筋膜の滑走を保ち、痛みの悪循環(硬さ→過緊張→痛み)を断つ(第3回)。
  • 再学習:首の関節位置覚(JPS)とバランス感覚を整え、めまい・不安感を軽減(第4回)。
  • 小さく正確に:神経が「安全」と判断できる刺激量に限定することで、過剰反応を起こさずに前進できる(第8回)。

今日から始める5分ルーティン

  1. 360度呼吸 1分
  2. 目だけサーチ(左右上下斜め)1分
  3. 胸ゆらし 1分
  4. 首1〜2割の向き変え(痛み0〜1)1分
  5. ぬるめ入浴 or 蒸しタオル 1分(就寝前がおすすめ)

「気持ちいい」「怖くない」を合図に、安心できる小さな積み重ねを続けましょう。

よくある質問(Q&A)

Q. ストレッチはどのくらい伸ばせばいい?
A. 痛みゼロ〜違和感1まで。引っ張らず、呼吸でほどくイメージ。

Q. トレーニングは必要?
A. はい。ただし“強さ”より“正確さ”が先です。フォームが崩れるほどの回数は逆効果。

Q. めまいが不安です。
A. 目→首の順に刺激する工夫が有効です。
視線運動→小さな首の追従→休憩の三段階を守ってください(第4回参照)。

まとめ:できることを、やさしく、続ける

セルフケアの核は「神経を落ち着かせ、動きの質を保ち、感覚と運動をつなぎ直す」こと。

小さく・正確に・気分よく。
これが回復を加速させる最短ルートです。

不安が強い時や症状が揺れる時こそ、呼吸と“ゆらし”からやり直せば大丈夫。身体は必ず応えてくれます。

次回予告:次回はいよいよ最終回。「むち打ち症からの回復ロードマップ」をお届けします。
ここまで学んだ知識を整理しつつ、やるべきことの道筋を決めていきましょう!

参考文献

急性むち打ち損傷に対する早期可動化

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/3081211/

むち打ち損傷に対する頸椎カラー、通常どおりの活動、または積極的可動化の比較:無作為化並行群試験

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17413465/

慢性むち打ちにおける中枢性感作の証拠:系統的文献レビュー

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23008191/

むち打ち関連障害患者における関節位置覚と静的立位バランスの変化:メタアナリシスおよび系統的レビュー

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33831060/

慢性むち打ち関連障害に対する運動療法の無作為化比較試験

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17029788/

 

 

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