2025年のレビューは6つの患者群に分けて活動復帰を検討し、復帰時期に一律の基準はないと整理しています。できないことは主治医の許可を軸に生活動作ごとに考えます。

この記事を書いた人:奥村龍晃(柔道整復師資格保有)
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こんにちは!
姿勢や日常動作のお悩みについてご相談を受けているフィジカルバランスラボ整体院、
院長の奥村龍晃です。

はじめに
「側弯症の手術後、できないことは何ですか?」。大人の側弯症で手術を受けた方、これから検討している方から、この不安をよく聞きます。荷物を持っていいのか、車の運転はいつからか、体をひねる動きは避けたほうがいいのか。毎日の生活に直結するので、気になりますよね。
以前、手術後しばらく経った方から「病院では順調と言われたけれど、買い物袋を持つと腰がこわばる感じがして、どこまで動いていいのか分かりません」と相談を受けたことがあります。これは施術後の変化ではなく、来院時によくある悩みとして紹介しています。
僕がまずお伝えしたいのは、側弯症手術後の「できないこと」は、全員に同じリストで決まるものではないということです。固定した範囲、骨のくっつき具合、年齢、筋力、痛み、しびれの有無、主治医の方針で変わります。だからこそ、ネットの体験談だけで判断せず、自分の手術内容に合わせて整理することが大切です。
なぜ起こるのか
側弯症の手術では、背骨を金属のスクリューやロッドで支え、必要な範囲を固定することがあります。固定とは、背骨の一部を動きすぎないように安定させることです。曲がりを整える目的がある一方で、固定された場所は以前のようには動きません。
そのため、手術後の生活で気をつけるポイントは、背骨を守る時期と、固定されていない場所に負担を集めすぎないことの2つに分けられます。たとえるなら、長い物干し竿の一部をしっかり固定した状態です。固定した場所は安定しますが、端の部分や周囲の関節には別の役割が回ってきます。
2020年の成人脊柱変形、つまり大人になって背骨の曲がりや前後左右のバランスが問題になりやすい状態に関するレビューでは、術後リハビリでは早い時期に背骨を守ること、骨がくっつく過程や骨の作り替えの時期を考えて運動開始のタイミングを決めることが重要だと整理されています。ただしレビュー論文であり、すべての人に同じ回数や同じ制限を示した研究ではありません。
2025年の脊柱変形手術後の活動復帰に関するレビューでは、若年者、成人脊柱変形、一般スポーツ参加者、競技者など6つの患者群で復帰の考え方が分けられています。術後の活動再開手順は世界的にもばらつきがあり、標準化が課題だと述べられています。つまり、「何カ月なら全員ここまでOK」と単純には言いにくいのです。
成人脊柱変形の手術では、合併症の確認も生活再開の判断に関わります。周術期、つまり手術前後の期間について、2018年の系統的レビューでは、術式や集計方法によって報告率は異なるものの、手術前後の期間で約24.2〜36.4%、その後の時期で約11.1〜15.4%と整理されています。ただし、これは文献全体の報告値で、個人の発生確率ではありません。
また、2017年の成人脊柱変形手術の多施設研究では、健康関連の生活の質は術後1年、2年で改善方向に向かう一方、身の回り動作や物を持ち上げる動作は1年時点で改善が限られる項目として報告されています。ただし対象は手術を受けた成人脊柱変形の方で、個々の固定範囲や術式によって結果は変わります。
解決の方向性
術後の生活動作は、「じっとしているとき」「動き始め」「重さが加わるとき」に分けると整理しやすくなります。座っているだけでつらいのか、立ち上がる瞬間だけ怖いのか、荷物を持ったときに腰や背中がこわばるのか。どの瞬間で不安が出るかによって、確認すべきことが変わります。

たとえば、前かがみとひねりが同時に入る動きは、手術範囲や主治医の指示によって注意点が異なります。床の物を片手で取る、後部座席の荷物をひねって取る、重い買い物袋を片側だけで持つ、といった場面です。ここで大切なのは、怖がって動かないことではなく、主治医から許可された範囲の中で、背骨だけに頼らない動き方を探すことです。
スポーツや強い運動については、さらに慎重な確認が必要です。後方固定術、つまり背中側から背骨を支えて固定する手術に関する2026年の系統的レビューでは、思春期特発性側弯症の11研究722人が整理されました。これは思春期の研究であり、大人の術後時期の目安ではありませんが、多くの患者さんは術後8〜12カ月でスポーツに戻る傾向が報告されています。一方で、年齢、カーブの大きさ、固定範囲、心理的不安、柔軟性低下などで時期が変わるため、大人の術後生活へそのまま当てはめることはできません。
2018年の思春期特発性側弯症の後方固定術後研究では、平均5.6年の経過で器具の破損は見られず、平均の痛みスコアは低めでしたが、隣の椎間板変化が一部で報告されました。この研究も若年者中心なので、大人の側弯症に直接置き換えるには限界があります。それでも、固定した場所以外の負担を長期的に見ていく視点は参考になります。
安静時や夜間にも強い痛みがある、しびれや力の入りにくさが広がる、発熱や体重減少がある、転倒や外傷後に痛みが強くなった、日ごとに悪化していく。このような場合は、セルフケアより先に医療機関での確認を優先してください。術後は「様子を見る」より、確認してから動くほうが安心につながります。
整体院でできることは、手術内容を変えることではありません。現在の症状や、主治医から示された制限、日常動作についてお話を伺い、許可された範囲で呼吸や股関節の使い方、力が入りすぎる場面を一緒に確かめます。その範囲を守ることが、術後の体と付き合ううえで大切だと僕は考えています。
今日からできること
次の3つは、主治医から日常生活動作の再開を許可されている方が、自宅で確認しやすい工夫です。手術直後や制限期間中の方は、必ず医療機関の指示を優先してください。痛みが出たら中止します。

動きの不安が出る瞬間をメモする
立ち上がり、車の乗り降り、買い物袋、寝返りなど、場面を1日3つまで書きます。痛みの強さだけでなく、「怖い」「こわばる」「ひねると不安」など感覚も残しておくと、主治医や専門家に相談しやすくなります。荷物は体の近くで、左右に分ける
買い物袋やかばんは片手だけで遠くに持たず、できるだけ体の近くで持ちます。重さを左右に分ける、リュックを使う、床から急に持ち上げないなど、背骨だけで踏ん張らない工夫を選びます。寝返りと起き上がりをゆっくり分ける
仰向けから一気に起きず、横向きになる、脚を下ろす、腕で支えて起きる、という順番に分けます。時間を決めず、痛みが出ない速さで動作を分けます。背中や腰に鋭い痛み、しびれ、力の入りにくさが出る場合は中止してください。
まとめと次の一歩
側弯症手術後にできないことは、全員で同じではありません。固定範囲、術後の時期、骨の状態、痛みやしびれ、生活で必要な動作によって判断が変わります。研究でも、術後の活動復帰にはばらつきがあり、個別の確認が必要だと整理されています。
大切なのは、「もう動いていいはず」と無理をすることでも、「怖いから何もしない」と止まることでもありません。主治医の指示を土台に、どの瞬間で不安が出るかを分け、背骨だけに負担を集めない生活動作を少しずつ確認していくことです。
手術後の生活動作で迷うときは、まず医療機関で現在の制限を確認してください。そのうえで、日常の姿勢や動き方をどう整えるかを一緒に考えることはできます。焦らず、今の体に合う範囲から進めていきましょう。
参考文献
- Rehabilitation in adult spinal deformity.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33089079/ - Guidelines for returning to activity after spinal deformity surgery.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39616557/ - Complications in adult spine deformity surgery: a systematic review of the recent literature with reporting of aggregated incidences.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29497853/ - Advantages and Disadvantages of Adult Spinal Deformity Surgery and Its Impact on Health-Related Quality of Life.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27398887/ - Return to Sport After Posterior Spinal Fusion in Adolescent Idiopathic Scoliosis: A Systematic Review and Clinical Recommendations.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41549713/ - Long-term outcome of posterior spinal fusion for the correction of adolescent idiopathic scoliosis.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30123840/
本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、個別の診断や治療を意図したものではありません。
痛みや不調がある場合、運動中に痛みが出た場合は中止し、必要に応じて医療機関にご相談ください。
症状が続く・繰り返す場合は、2週間を待たず主治医へご相談ください。
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