2024年の65試験をまとめた報告では、診断後の運動と情報提供が基本とされましたが、一律の体操は示されていないため、痛む場所、腫れ、引っかかり、外傷を記録し、危険サインがあれば整形外科へ相談しましょう。

この記事の執筆・監修:奥村龍晃(柔道整復師)
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こんにちは!
脊柱側弯症専門のフィジカルバランスラボ整体院、
院長の奥村龍晃です。
はじめに
「床の物を取ろうとすると、しゃがむ途中で膝が痛い」
「痛くても動かしたほうがよいのか、休んだほうがよいのか分からない」
しゃがむ動作は、掃除、庭仕事、着替えなどで繰り返します。
そのたびに痛むと、膝を曲げること自体が不安になりますよね。
来院時にも、「お皿の周りが痛いから、軟骨がすり減ったのでしょうか」という相談があります。
これは施術後の変化ではなく、よく聞く悩みの一例です。
僕がまずお伝えしたいのは、痛む場所や動作だけで、傷んでいる組織や病名を決めないことです。
しゃがむときのお皿まわりの痛みは、膝蓋大腿痛(膝のお皿の周囲や後ろに感じる痛み)でみられることがあります。
しかし、外傷、膝の腫れ、関節の引っかかりなどがある場合は、別の状態も含めた医療機関での確認が必要です。
僕がまず分けて見るのは、しゃがみ始め、深く曲げた位置、立ち上がりのどこで痛むかです。
しゃがむと膝が痛くても、原因を決められない理由

しゃがむ動作では、膝だけでなく、股関節や足首も曲がり、身体全体の重さを支えます。
動き方は人によって異なりますが、見た目だけで「股関節が硬いから」「足首が曲がらないから」と原因を決めることはできません。
しゃがむ一場面だけで原因を決めるのは、一枚の写真だけで一日の出来事を決めるのと少し似ています。
2019年の膝蓋大腿痛に関する医療者向けの診療指針では、はっきりした外傷がなく始まる膝の前面やお皿まわりの痛みが説明されています。
しゃがむ、階段を上り下りする、長く座る、走る、跳ぶなど、膝を曲げて体重を支える動作で痛みが強くなることがあります(PMID: 31475628)。
ただし、この特徴に当てはまるだけで膝蓋大腿痛と診断できるわけではありません。
医療機関では、痛みの始まり方、外傷、腫れ、動かせる範囲、力の入り方などを確認し、ほかの状態を除外しながら判断します。
「しゃがむと痛い」という一つの情報は大切ですが、それだけで原因を一つに決めることはできません。
膝のお皿まわりの研究で分かること

2024年の推奨をまとめた報告(ベストプラクティスガイド)は、膝蓋大腿痛の治療を検討した質の高い65件の試験、合計3,796人の結果を統合しました。
これらは、参加者を偶然にグループ分けして比べるランダム化比較試験です。
膝蓋大腿痛を経験した12人への面接と、臨床と研究の専門家19人の意見も合わせています(PMID: 39401870)。
このガイドは、膝を中心とした運動に、必要に応じて股関節を対象とした運動を組み合わせ、情報提供とともに行うことを基本としています。
一方、靴の中敷き(足底板)、テープで支える方法(テーピング)、負担を確かめながら動き方を練習し直すこと(動作の再学習)などを加えるかは、
十分な評価後に、本人の状態や希望に合わせて決めるとしています。
つまり、研究が支持しているのは、診断後に一人ひとりの状態を確かめ、運動と情報提供を組み合わせることです。
この研究は、全員が同じスクワットや股関節運動を始める根拠にはなりません。
2013年の診断検査に関する系統的レビュー(複数の研究を集めて整理する方法)では、5研究・25種類の検査が評価されました。
スクワット中の痛みは膝蓋大腿痛を考える手がかりになりましたが、単独で病名を確定できるほど強い検査ではありませんでした(PMID: 23232069)。
この結果からも、痛みを再現するために何度もしゃがみ、自己診断することは勧められません。
自然に困った場面を記録し、診察でほかの状態と区別してもらうことが大切です。
相談前に記録したい3つのこと

痛みを確かめるために、深くしゃがむ動作を繰り返す必要はありません。
日常で自然に困ったとき、次の3点を記録してください。
痛む場所と動作を記録する
お皿の周囲、膝の内側、外側、後ろ側など、どこに感じたかを書きます。
しゃがみ始め、深く曲げた位置、立ち上がりなど、自然に痛みが出た場面も記録します。始まり方と痛み以外の変化を記録する
転倒やひねりの後に始まったか、急に腫れたか、熱っぽさ、引っかかり、力が抜ける感じがあるかを確認します。
痛みを再現するために、膝を何度も曲げ伸ばしする必要はありません。生活への影響と経過を記録する
歩行、階段、椅子からの立ち上がり、仕事や睡眠への影響を書きます。
症状が続く、強くなる、生活に支障がある場合は、期間にかかわらず整形外科などの医療機関へ相談してください。
記録は、自分で病名を決めるためではありません。
医師へ経過を伝え、必要な診察や検査を検討してもらうための情報です。
受診を急ぎたい症状
次のような場合は、スクワットやストレッチを試さず、医療機関へ相談してください。
- 転倒やひねりの後から体重をかけられない
- 膝が大きく腫れた、変形している
- 膝が赤い、熱い、発熱や強いだるさを伴う
- 膝が引っかかって伸ばせない、動かせない
- 脚に急に力が入らない、膝崩れを繰り返す
- 痛みが急に強くなった、日ごとに悪化している
強い外傷後に歩けない、膝が変形している、発熱を伴う強い腫れがある場合は、救急相談を含め、速やかに医療機関へ相談してください。
痛みや腫れを我慢して、深くしゃがむ練習を続けないでください。
まとめと次の一歩
しゃがむときの膝のお皿まわりの痛みは、膝蓋大腿痛でみられる症状の一つです。
ただし、痛む場所と動作だけで病名や原因を決めることはできません。
膝蓋大腿痛の研究では、診断後の運動と情報提供が基本とされていますが、内容はその人の状態に合わせて選ばれます。
股関節や足首の見た目だけで原因を決めたり、一律のスクワットを始めたりする根拠ではありません。
痛む場所、始まり方、腫れや引っかかり、生活への影響を記録し、必要に応じて医療機関での評価へつなげることが次の一歩です。
参考文献
- Best practice guide for patellofemoral pain based on synthesis of a systematic review, the patient voice and expert clinical reasoning (British Journal of Sports Medicine, 2024)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39401870/ - Patellofemoral Pain (Journal of Orthopaedic & Sports Physical Therapy, 2019)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31475628/ - Clinical test for diagnosis of patellofemoral pain syndrome: Systematic review with meta-analysis (Physical Therapy in Sport, 2013)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23232069/
本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、個別の診断や治療を意図したものではありません。
痛みや不調がある場合、運動中に痛みが出た場合は中止し、必要に応じて医療機関にご相談ください。
症状が続く、強くなる、または日常生活に支障がある場合は、期間にかかわらず医療機関にご相談ください。
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