2026年に40人を比べた研究では、腰痛の有無で腰まわりの筋肉の働きに差があっても体の動き方に明確な差はなかったため、階段を下りて痛む瞬間と脚の症状を記録し、手すりなどで安全を優先しましょう。

この記事の執筆・監修:奥村龍晃(柔道整復師)
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こんにちは!
脊柱側弯症専門のフィジカルバランスラボ整体院、
院長の奥村龍晃です。
はじめに
「上りよりも、階段を下りるときに腰へ響く」
「一段目で怖さがあり、腰に力が入ってしまう」
階段の下りで痛みが出ると、転ばないか心配になり、外出や駅の利用を避けたくなることがありますよね。
来院時にも、「腰が弱いから、もっと階段で鍛えたほうがよいのでしょうか」という相談があります。
これは施術後の変化ではなく、よく聞く悩みの一例です。
僕がまずお伝えしたいのは、階段を下りるときの腰痛だけで、腰の筋力や姿勢を原因と決めないことです。
僕が分けて見るのは、一段目へ足を出す前、足が下の段へ着く瞬間、体重を移す途中、次の足を出すときのどこで痛むかです。
脚のしびれや力の入りにくさ、ふらつきが一緒にあるかも、安全を考えるうえで重要です。
階段を下りると腰が痛くても、原因を決められない理由

階段を下りるときは、足を下の段へ運びながら、身体が急に落ちないように速度を調整します。
腰だけでなく、目で段差を確認すること、手すり、股関節、膝、足首の動きなどが関わります。
痛みがある人は、身体を固める、ゆっくり動く、手すりを使うなど、痛みや不安へ対応する動きを選ぶ場合があります。
こうした動きが見えても、それが痛みの原因なのか、痛みに対する反応なのかは、見た目だけでは分かりません。
階段を下りる一場面だけで原因を決めるのは、一枚の写真だけで一日の出来事を決めるのと少し似ています。
また、腰痛には、腰周辺の筋肉や関節に関連する痛みだけでなく、神経に関わる症状、外傷、感染症など、医療機関での確認が必要な背景もあります。
「前に傾く」「左右差がある」という見た目だけで、階段時の腰痛の原因を決めることはできません。
階段と腰痛の研究で分かること

2026年の横断研究(ある時点で2群を比べる研究)では、慢性的な腰痛がある成人20人と、腰痛のない成人20人が階段を上り下りしました。
腰まわりの筋肉がどこで、どの程度働くか(筋活動)を詳しく測ると、腰痛群では分布や大きさに違いがありました(PMID: 41456537)。
一方で、研究者が測定した胴体(体幹)の動き方には、2群の明確な差がありませんでした。
この研究は、階段を下りるときに痛む人だけを対象にしたものではなく、そのときの痛みを結果として評価した研究でもありません。
この研究は、階段昇降中の筋肉の働きの違いを示しますが、その違いが痛みの原因なのか、痛みに対応して生じた反応なのかは判断できません。
2019年の別の横断研究では、長く続く腰痛がある28人を動きの特徴によって2群に分け、腰痛のない18人と階段を下りる場面を比較しました。
一方の腰痛群では腰の動きが早く始まり、骨盤と脚のひねり(回旋)が大きい結果でしたが、
もう一方の腰痛群と腰痛のない人たちの差は小さいものでした(PMID: 32015197)。
参加者が少なく、研究独自の分類を使った結果なので、すべての腰痛へ当てはめることはできません。
この研究も、動きの違いが腰痛を起こしたと証明したものではありません。
2021年の腰痛に関する医療者向けの診療指針は、急に始まった腰痛・長く続く腰痛に対する運動や情報提供などを整理しています(PMID: 34719942)。
ただし、階段を下りるときの腰痛に対して、全員が同じ姿勢や足の出し方を使うべきだとは示していません。
つまり、研究から言えるのは、腰痛がある人の一部に筋活動や動きの違いがみられることです。
特定の姿勢を直せば痛みが軽くなる、階段で反復練習すればよい、という効果までは確認されていません。
安全のために確認したい3つのこと

痛みを確かめるために、階段を何度も往復する必要はありません。
実際の移動で自然に症状が出たとき、次の3点を整理してください。
痛む瞬間と場所を記録する
一段目を下りる前、足を置いた瞬間、体重を移したとき、次の足を出すときのどこで痛むかを書きます。
腰の中央、片側、脚へ響く感じなど、痛む範囲も記録します。安全に関わる症状を記録する
脚のしびれ、力の入りにくさ、膝が崩れる感じ、つまずき、ふらつきの有無を確認します。
これらがあるときは、階段で動作を再現せず、医療機関へ相談してください。手すりと移動方法を選ぶ
手すりがある場合は使い、痛みや不安定感が強い日は、荷物を持って急いで下りないでください。
一段ずつ足をそろえる、エレベーターを使う、周囲へ手伝いを頼むなど、安全を優先します。
下り方を自己流で直そうとせず、転倒を避けながら医師へ伝える情報を整理してください。
受診を急ぎたい症状
2012年の腰痛に関する医療者向けの診療指針は、重い病気や神経に関わる症状の確認を求めています。
その疑いがある場合は、必要に応じて医療機関へ紹介するとしています(PMID: 22466247)。
次のような場合は、セルフケアや階段練習をせず、医療機関へ相談してください。
- 脚の力が急に入りにくい、症状が広がっている
- 尿や便が出にくい、漏れるなどの変化がある
- 股の間の感覚が鈍い
- 転倒や強い衝突の後から痛む
- 発熱、強いだるさ、原因不明の体重減少を伴う
- 安静時や夜間も強く痛む、日ごとに悪化している
排尿・排便の変化、股の間の感覚低下、進行する脚の筋力低下がある場合は、直ちに救急外来を受診し、自力で移動できない場合は119番へ連絡してください。
階段で脚が抜ける、つまずきが急に増えた、転倒した場合も、反復練習を続けないでください。
まとめと次の一歩
階段を下りると腰が痛いとき、筋活動や動き方に違いがみられる場合があります。
しかし、横断研究で見つかった違いだけでは、姿勢、筋力、骨盤の動きが痛みの原因だとは判断できません。
痛みを再現するために階段を往復せず、痛む瞬間、脚の症状、安全に関わる変化を記録してください。
不安定なときは手すりや別の移動方法を選び、症状が続く、強くなる、生活に支障がある場合は医療機関へ相談しましょう。
下り方を自己流で直すより、転倒を避けて症状を記録し、必要なときに医療機関へ相談することが次の一歩です。
参考文献
- Motor adaptations during stair ascent and descent in individuals with chronic primary low back pain (Journal of Electromyography and Kinesiology, 2026)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41456537/ - Examination of Lumbopelvic and Lower Extremity Movements in two Subgroups of People with Chronic Low Back Pain Based on the Movement System Impairment Model During a Stair Descending Task (Ortopedia Traumatologia Rehabilitacja, 2019)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32015197/ - Interventions for the Management of Acute and Chronic Low Back Pain: Revision 2021 (Journal of Orthopaedic & Sports Physical Therapy, 2021)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34719942/ - Low back pain (Journal of Orthopaedic & Sports Physical Therapy, 2012)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22466247/
本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、個別の診断や治療を意図したものではありません。
痛みや不調がある場合、運動中に痛みが出た場合は中止し、必要に応じて医療機関にご相談ください。
症状が続く、強くなる、または日常生活に支障がある場合は、期間にかかわらず医療機関にご相談ください。
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