片側の肩こりは、首だけの問題ではなく、肩甲骨の動き、胸郭のかたさ、長時間同じ姿勢が重なって起こることがあります。2021年の27RCTレビューと2023年のオフィスワーカー研究を踏まえ、観察・呼吸・作業環境の3ステップで負担を整理する考え方を解説します。

この記事を監修している人:奥村龍晃(柔道整復師資格保有)
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こんにちは!
脊柱側弯症専門のフィジカルバランスラボ整体院、
院長の奥村龍晃です。
はじめに
「右だけ肩が重いんです」
「マッサージしても、いつも同じ側が凝るんです」
40代後半から50代の方から、こうした相談を受けることがあります。
肩こりというと首や肩そのものだけを思い浮かべやすいですが、実際には胸のかごのような部分である胸郭や、肩甲骨の動き、体幹の左右差が重なっていることも少なくありません。
先日も、長時間のデスクワークをされている50代女性が、左の肩だけが夕方になると固まる感じがすると話してくれました。
腕を回すと少し楽になるけれど、仕事が続くとまた戻る。鏡で見ると肩の高さにも少し差がある気がして、「もしかして背骨まで関係しているのでしょうか」と不安になっていたんですね。
僕が最初にお伝えしたいのは、片側の肩こりがあるからといって、すぐに大きな異常と決めつけなくてよいということです。
ただ一方で、いつも同じ側に負担が集まる背景を整理しておくと、無理なセルフケアを繰り返しにくくなります。
この記事では、片側の肩こりが続きやすい理由を、PubMedにある研究を踏まえながらやさしく整理します。
なぜ起こるのか
肩は、首の付け根だけで働いているわけではありません。
肩甲骨、肋骨、背骨がチームのように連動しながら腕や頭を支えています。
ここで胸郭が硬くなったり、肩甲骨の滑りが悪くなったりすると、片側の僧帽筋の上のほうや首の横がずっと頑張りやすくなります。
たとえるなら、少し傾いた台車を片側だけ強く押し続けるようなものです。
同じ作業でも、片側ばかり疲れやすくなるんですね。
2023年に109人のコンピューター作業者を調べた研究では、肩甲骨の動きの乱れがある人で、首のつらさや利き手側の肩の痛みが強い傾向が報告されました。
また、首や肩甲骨まわりの不調があるオフィスワーカーを対象にした別の研究でも、痛みがある側で肩甲骨の動きの乱れが多く見られました。
研究だけで「これが原因です」と断定はできませんが、片側の肩こりをみるときに、肩甲骨と胸郭の動きを一緒にみる意味はありそうです。
もう一つ大切なのは、長時間同じ姿勢です。
2021年のランダム化比較試験では、机や椅子の高さを体格に合わせて見直したグループで、首、肩、上背部の痛みが低くなりました。
さらに2024年の職場運動研究では、柔軟性、筋力、バランスを含む運動を6か月続けたグループで、首や肩を含む複数部位の痛みの強さと持続時間が下がっています。
つまり、片側の肩こりは「その場で揉む」だけではなく、日中の姿勢と体の使い方を変える視点が大切なんです。
ここで、側弯症とのつながりも少し触れておきます。
肩の高さの左右差があると、「これは側弯症ですか」と心配になる方がいます。
ただ、2022年の予備的研究では、肩の左右差だけでは側弯症のスクリーニング精度は高くないと報告されています。
ですから、肩の高さだけで自己判断するのはおすすめしません。
その代わり、肩こりがいつも片側に偏る、背中や肋骨の左右差も目立つ、前かがみで片側の背中が盛り上がる、腰痛や股関節痛も重なっている、といったときは、体幹全体の左右差まで含めて確認する価値があります。
解決の方向性
僕が現場で大切にしているのは、痛い場所を強く押す前に、まず「どの場面で片側に仕事が集まるのか」を見つけることです。
具体的には、座ってパソコンを見る姿勢で片側の肩が上がっていないか、息を吐いたときに胸郭が十分にしぼめるか、腕を上げたときに肩甲骨が引っかかっていないか、といった点を丁寧に整理します。
そのうえで、呼吸で胸郭を動かしやすくし、肩甲骨の滑りを穏やかに取り戻し、最後に作業姿勢の負担を見直します。
2021年のシステマティックレビューでは、肩の痛みがしっかりある働く人では、運動を含む介入が痛みを下げる方向に働く可能性が示されました。
ただし、痛みが軽い人すべてに同じ効果が出るわけではなく、机まわりの工夫だけで十分とは言い切れません。
だからこそ、「運動だけ」「環境だけ」と一つに決めず、その人にとって負担の強い場面を見つけて組み合わせることが現実的です。
大人の側弯症につながる入口として考えるなら、片側の肩こりそのものを怖がる必要はありません。
ただ、40代後半から50代で、肩こりに加えて腰痛や股関節痛、立つと片側に体重が乗る感じがある場合は、肩だけでなく背骨の並び方や骨盤の傾きまでみたほうが全体像が分かりやすくなります。
片側の肩こりは、その最初のサインとして役立つことがあるんですね。
今日からできること
痛みが強い日に無理をする必要はありません。違和感や痛みが増えるときは中止してください。
鏡で肩の力みを30秒観察する(目安:朝と夕方に各1回)
正面から立って、左右の肩の高さ、首がすくみやすい側、肘が体から離れやすい側を見ます。
整える前に、まず偏りに気づくための観察です。写真を撮って比べるのも役立ちます。胸郭をひろげる呼吸を5呼吸する(目安:1日3セット)
椅子に浅く座り、片手を胸の横、もう片手をみぞおちに当てます。
吸う息で胸の横がふくらみ、吐く息で肋骨が静かにしぼむのを感じます。
肩をすくめず、首に力が入らない範囲で行ってください。痛みが出たら中止です。60分ごとに机の高さを1分見直す(目安:仕事中に繰り返す)
画面を少し高くする、前腕を机に軽く預ける、マウス側の肩が上がりっぱなしにならないようにする。
この小さな調整だけでも、片側の肩に集まる負担が減りやすくなります。
まとめと次の一歩
片側の肩こりが続くときは、首だけ、肩だけを責めるより、胸郭のかたさ、肩甲骨の動き、長時間同じ姿勢を一緒に整理したほうが、負担の偏りが見えやすくなります。
研究でも、オフィスワーカーでは肩甲骨の動きの乱れや作業環境が、首肩のつらさと関わる可能性が示されています。
一方で、肩の高さの左右差だけで側弯症と決めつけることはできません。
もし、片側の肩こりに加えて背中の左右差、腰痛、股関節痛、立ち姿の偏りが続くなら、体幹全体を確認することが次の一歩になります。
40代後半から50代は、まだ日常動作の負担のかかり方を見直しやすい時期です。
できることから少しずつ、片側に集まりやすい頑張りをほどいていきましょう!
参考文献
- Neck and Shoulder Pain with Scapular Dyskinesis in Computer Office Workers (Medicina (Kaunas), 2023)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38138262/ - Prevalence of scapular dyskinesis in office workers with neck and scapular pain (Int J Occup Saf Ergon, 2023)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34927576/ - Effects of Workplace-Based Intervention for Shoulder Pain: A Systematic Review and Meta-analysis (J Occup Rehabil, 2021)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33006720/ - Effect of an ergonomic intervention involving workstation adjustments on musculoskeletal pain in office workers-a randomized controlled clinical trial (Ind Health, 2021)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33250456/ - A Comprehensive Workplace Exercise Intervention to Reduce Musculoskeletal Pain and Improve Functional Capacity in Office Workers: A Randomized Controlled Study (Healthcare (Basel), 2024)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38727472/ - Is Shoulder Imbalance a Useful Parameter in the Screening of Idiopathic Scoliosis? A Preliminary Study (Rev Bras Ortop (Sao Paulo), 2022)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37663184/
本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、個別の診断や治療を意図したものではありません。
痛みや不調がある場合、運動中に痛みが出た場合は中止し、必要に応じて医療機関にご相談ください。
2週間以上症状が続く場合は、専門家への受診をおすすめします。
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