研究データに基づき、約66%のむち打ち症患者が胸椎にも痛みを抱えていることから、胸椎の可動性を回復させるアプローチが首の痛み改善に大きく貢献します。

この記事を監修している人:奥村龍晃(柔道整復師資格保有)
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こんにちは!
脊柱側弯症専門のフィジカルバランスラボ整体院、
院長の奥村龍晃です。
「むち打ちになってから、首だけじゃなくて背中まで痛い…」
「首を動かすと、なんだか背中までつっぱる感じがする…」
もしあなたがこのようなお悩みを抱えているなら、今回の記事はきっとお役に立てるはずです。
多くの人が「むち打ち=首の問題」と考えがちですが、実は、むち打ち症に悩む方の3人に2人(約66%)が、胸椎(きょうつい)—つまり背中の中央部分—にも痛みを抱えているという驚きの研究データがあります。
今回は、なぜ専門家がむち打ち症のリハビリで「胸椎」を重要視するのか、その理由を科学的な視点から、そしていつものように、できるだけ分かりやすく解説していきます。
この記事を読み終える頃には、あなたの長引く不調の「本当の原因」が見えてくるかもしれません。
1. むち打ち症の隠れた主役、「胸椎」とは?
まず、「胸椎」とはどこを指すのでしょうか?
背骨は、上から「頸椎(けいつい)」「胸椎」「腰椎(ようつい)」という3つのパーツで構成されています。
胸椎は、ちょうど首の付け根から、みぞおちの高さくらいまでにある12個の骨のことです。

首の動きの「3分の1」を支える重要な役割
「首を動かす」というと、当然、首の骨(頸椎)だけが動いていると思いがちですよね。
しかし、研究によると、なんと首を前に倒す動き(屈曲)の約33%、そして首を左右にひねる動き(回旋)の約21%は、この胸椎が担っていることが分かっています。
つまり、胸椎がスムーズに動かなければ、首はその動きを代償しようとして、過剰な負担を強いられるのです。
イメージしてみてください。
10人で行うチーム作業があったとして、そのうちの2〜3人が突然動かなくなってしまったら、残りの7〜8人は、その分余計に働かなければならず、疲弊してしまいますよね。
これと全く同じことが、首と背中の間で起こっている可能性があるのです。
2. なぜ、むち打ちで胸椎が硬くなるのか?
理由1:筋肉の「連結」—僧帽筋の影響
私たちの首と背中は、「僧帽筋(そうぼうきん)」という大きな筋肉で繋がっています。
この筋肉は、首の後ろから肩、そして背中の中央部までを広く覆うひし形の筋肉です。
むち打ちの瞬間、この僧帽筋は、頭が振られるのを必死に食い止めようとして、強く引き伸ばされながら収縮します(遠心性収縮)。
この強力な負荷によって、筋肉そのものや、筋肉が骨に付着する部分(筋膜)が微細に損傷し、硬くなってしまうのです。
僧帽筋は首と胸椎の両方にまたがっているため、この筋肉が硬くなると、胸椎全体の動きも悪くなります。
これが、背中の痛みや、首を動かした時のつっぱり感の正体の一つです。
理由2:衝撃の「波及」—構造的な連動
もう一つの理由は、衝撃そのものが物理的に胸椎へ伝わることです。
交通事故の衝撃は、まずシートベルトで固定されている骨盤や胸郭(胸の部分)に伝わります。
その固定された土台の上で、頭と首がしなるように振られます。
この時、衝撃の力は首(頸椎)に集中しますが、その土台である胸椎にも、衝撃の余波が伝わり、関節やその周りの組織にダメージを与えます。
特に、胸椎は肋骨と連結しているため、もともと動きが硬くなりやすい構造です。
そこに衝撃が加わることで、さらに動きの柔軟性が失われてしまうのです。
3. 「首だけ」のリハビリでは不十分な理由
- 胸椎が硬いままでは、首への負担は減らない
- 痛みの根本原因が、実は背中にあるかもしれない
胸椎という「土台」の動きが悪ければ、いくら首をマッサージしたり、ストレッチしたりしても、その場しのぎにしかなりません。
蛇口が全開のまま、床にこぼれた水を拭いているようなものです。
まずやるべきは、蛇口を閉めること、つまり胸椎の機能を回復させることなのです。
臨床現場でも、首の痛みを訴える患者さんの胸椎の動きを確認し、アプローチすることで、劇的に首の動きや痛みが改善するケースは少なくありません。
4. 専門家は「全体」を見ている
私たちがむち打ち症の評価を行う際、痛みを訴えている首だけを見ることはありません。
必ず、胸椎の動き、肩甲骨の位置、さらには骨盤の傾きまで、全身のつながりを評価します。
なぜなら、身体はすべて繋がっているからです。
レントゲンでは「異常なし」と言われたその痛みは、こうした「動きの異常(機能不全)」に隠されていることがほとんどです。
もし、あなたが今受けているリハビリが首周りのアプローチに終始しているのであれば、一度、担当の先生に「私の背中の動き(胸椎)はどうなっていますか?」と質問してみるのも良いかもしれません。
その一言が、あなたの回復を新たなステージに進めるきっかけになる可能性があります。
まとめ:不調の鍵は、見過ごされた「背中」にある
- むち打ち患者の3人に2人は、胸椎(背中)にも痛みを抱えている。
- 胸椎は、首の動きの約3分の1を担う「隠れた主役」である。
- 筋肉の連結や衝撃の波及により、胸椎は硬くなりやすい。
- 胸椎の機能不全を放置したままでは、首への根本的なアプローチにはならない。
長引く首の痛みや不調に悩んでいる方は、ぜひ一度、ご自身の「背中」に意識を向けてみてください。
そこに、回復への大きなヒントが隠されているかもしれません。
次回は、むち打ち症で多くの人が悩まされる「めまい・ふらつき」の正体について、脳が感じる“位置情報”のズレという視点から掘り下げていきます!
参考文献
むち打ち関連障害における胸椎機能障害:系統的レビュー
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29570722/
亜急性むち打ち患者における頸胸椎の可動性評価
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18509555/
長時間座位と身体活動が胸椎可動性に及ぼす影響:観察研究
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29730619/
慢性頸部痛患者と健常者における頸椎・胸椎キネマティクスの比較
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34942496/
頸部神経根症患者に対する胸椎マニピュレーションの即時および短期効果:ランダム化比較試験
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31021691/
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